ことえり
1998年08月


 兼六園にほど近い、一戸建を借りている。
 リッチなわけではない。とてもとても古い家で、家賃は安いのだ。
 戦争のとき、金沢は空襲に遭わなかったので、昔ながらの町並が残っていたりする。狭い路地、庇が触れ合わんばかりの隣家...。すると、今建っている分にはよいのだが、いざ建て替えとなると、建築基準法だかのせいで土地に目一杯建物を建てられなかったりするのだ。
 おそらく、そんなわけで、古いけれども建て替えられない家屋などというのが、稀に格安で借りられたりするということらしい。

 前置きが長くなったが。

 古い街には古い街なりの近所付き合いがある。ご多分に漏れず、わが家にも『班長』という役割が回ってきた。ご近所のおよそ10世帯の、回覧板や町会費の取りまとめをやるのである。
 で、「金沢市民交通災害共済について」なんて文書を、あれこれ作ることになる。
文書がたまってきたので、新しいフォルダを作って名前をつける。「ちょうないかい」*変換*...。  

「超内科医」

 Macに標準で付いてくるIM、「ことえり」という奴は、いつもだいたいこんなもんである。
 難しい文章、面倒な書類、はたまたネットでの論争。ここぞという時にとんでもない変換をして、どっと脱力させてくれる。
 WWWにも面白い誤変換を扱うサイトは少なくないが、わが「ことえり」が相当な貢献をしているだろうことは想像に難くない。

 でも待てよ。
 トホホな分だけ、こっちがユーザ辞書を鍛え上げれば、かえって使い易くなるかもしれない。ひょっとすると「My Fair Lady」のイライザみたいに、聡明で魅力的な、世界一使い易いIMに変身してくれるかもしれない。なにしろHDにはたっぷり余裕がある。私の語彙をこまめに登録して、辞書を育てて...。

 だが、しかし。
 私にはエンリ・イギンズ氏の半分も、忍耐力なんか持ってないのであった。
 だから、やっぱりことえりの誤変換で脱力する日々が続いている。



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