当たる話
1998年07月


 私はよく当たる。
 当たると言っても、くじ運がいいとか、そういう前向きな当たり方ではない。まぁ、もっとも、交通事故とか、それほど深刻なことでもないのだが。

 さて、先日も、とあるレストランに入った。  ところが、いつまでたっても料理が出てこない。おまけに、何故かウェイトレスも近くには見当たらない。やっとの思いで注文はまだかと聞くと、暫く厨房に引っ込んだあと、
「申し訳ありません、お客様のご注文が、こちらに通っていなかったんですが、何をご注文でしたでしょうか...?」
 流石に、注文そのものが消えてしまったのは初めてだった。私が文句を言うと、ウェイトレスは慌てて店長を呼びにいった。
 そして、「まことに申し訳ございませんっ!」と頭を下げてやってきた店長は...。
 注文を聞いて忘れてしまった、まさにその人物だったりするのだった。

 そう、私はよく当たる。
 レストランとかで、なにかと忘れ去られることが、異様に頻繁なのだ。

 そういう小さな小さな不幸はやたらとあるのだが、考えてみれば、お陰様であまり大きな不幸には遭ったことがない。こないだも無事故無違反で表彰されたし、生まれてこのかた、数えで100歳まで生きたばあちゃんが先ごろ大往生した他には、親戚の葬式に出たことがない。みんなめちゃめちゃ元気だ。

 似たような人はいるらしい。FMを聞いていると「ついてないよ〜」なんてFaxもよく紹介される。そんな時、パーソナリティが言ってた。不しあわせがあれば、別のしあわせで帳尻が合うもの。そういうちっちゃな不幸で、厄払いができてるんだよ、って。

 帰りのクルマの中、ヨメさんとの話題は、べつに文句とか悪口ではなかった。さて、あの店長さんは、今日は社員やバイトに、いろいろ言われちゃうんだろうねぇ、なんて。余計なお世話なのだが。

 めでたしめでたし。



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